子は丑の背に乗り宴会へ。

宴会へ向かう道中、手土産を積んだ荷車が壊れてしまいました。
丑のその細い両の手では、全てを持って行く事は出来ません。

「…しゃあないなぁ。大事なものだけ、持って行こ………………ん?」

考え込む丑の目に映ったのは、積んだ覚えのない栗色の尻尾。
藁をかき分け、そっと中を覗けば…尻尾の主は赤いチャンチャンコを羽織った子でした。
悪知恵のよく働く子は、丑の荷車にこっそりと忍び込み
宴に一番乗りするつもりだったのです。
次に目が覚める時は、神様のお屋敷に着いた時だと疑わっていないのか
月明かりに照らされた幼い顔は、すやすやと寝息を立てていました。

「はらぁ…子さんたら、いつの間に。」

ぱちくり、と目を瞬かせて、丑は子の頬をそっと撫でました。
藁の中とはいえ、今は寒い冬です。
ふくふくとした柔らかいほっぺたは、冷たい空気に触れて真っ赤になっていました。
それを見て、丑は悲しそうに長い睫毛の生えた瞼を伏せました。

「もう…先に言うてくれたら、毛布のひとつでも用意したんに。 どっこらせ。」

丑は子を起こさないようにそっとおぶって、改めて壊れた荷車を見下ろしました。
両手が塞がってしまったので、神様へのお土産は諦めるしか無さそうです。


けれど、丑は残念に思っているような素振りも見せず
それどころか小さく子守唄を口ずさみながら、変わらぬ歩調で歩き出しました。

「…こっちの方が暖かいやんなぁ。」

そして背負った子の寝顔を見て
それはそれは穏やかに 微笑んでいたと言います。